申如録

日常生活で考えたことなど

結婚の話

A「人ってさ、結婚するの好きだよね。」
B「え、急に何? どうしたの?」
A「いや、ふと気になっていろいろ調べてみたんだけど、2019年の婚姻率は47%で、日本人の2人に1人は結婚しているみたいなんだ。それに、生涯未婚率は男性が23.4%、女性が14.1%らしいから、結婚したことがある日本人は実に8割にもなる! これって実に驚くべきことじゃないかな?」
B「どうしてさ? 人が結婚するなんて、ある程度の年齢になれば当たり前じゃないか。」
A「そういう君は結婚願望みたいなものがあるのかい?」
B「そりゃあるよ。人並みに幸せな家庭を築くのは小さいころからの夢だからね。」
A「そっか、まあそりゃそうだよね。」
B「何だいその釈然としない反応は…」
A「個人的な話で恐縮だけどさ、僕は結婚というものがどうしてもロマンチックだとは思えないんだ。」
B「え、そうなの? 結婚なんてまさにロマンチックじゃないか、結婚式とか夢舞台みたいで感動的だと思うけどな。」
A「僕にとっては結婚なんてものは単なる制度でしかないし、別にしなくても十分に生きていけるものなんだ。現に結婚していない人は2割いて、生涯未婚率だって男女ともに上昇しているわけだろう?」
B「そう言われるとそうかもしれないけどさ、それじゃ好きな人と一緒になる必要はないって思ってるの?」
A「いやいや、好きな人との出会いや、好きな人と一緒になることが不必要だと言っているわけじゃないよ。それらはむしろ人生において大きな価値を持つものだとさえ思っているさ。でも、好きなら一緒にいれさえすればいいのに(したがって事実婚や同棲に対しては納得できるんだ)、そこに結婚というプロセスを付け加える必要性がいまいちわからないんだよ。」
B「うーん僕にはそのわからなさがよくわからないなあ…」
A「それじゃ結婚って何なのか、ちょっと考えてみようか。コロナで暇だし。」

1.結婚の「意味」

A「試みに手元の『広辞苑 第五版』をひもといてみると、こんな記述があるね。」

 結婚:男女が夫婦となること。→婚姻
 婚姻:一対の男女の継続的な性的結合を基礎とした社会的経済的結合で、その間に生まれた子供が嫡出子として認められる関係

B「うわあなんだかリベラリストたちの非難を受けそうな記述だなあ。」
A「SOGI的なツッコミどころは多々あるけどひとまず措くとして、この記述から結婚(婚姻)は次の2つの要件から成り立っていることがわかるね。」

 ① 一対の男女の継続的な性的結合を基礎とした社会的経済的結合
 ② その間に生まれた子供が嫡出子として認められる関係

B「そうだね、その2つを満たせば結婚ということになりそうだね。」
A「うん、基本的にはこれで良いと思う。もっとも、①は満たさずに②のみ満たす関係、つまり2人の間にほとんど結合がないけどその間に生まれた子供が嫡出子として認められる関係、いわゆる「偽装結婚」があり得るから、①と②を「および」でつなぐこの定義は不完全なんだけど、一応の目安にはなるな。」
B「よくわからないけど次にいこうよ。」

2.結婚の「意味」の吟味

A「それじゃあ、要件①②について詳しく検討してみよう。」
B「まず①の「一対の男女の継続的な性的結合を基礎とした社会的経済的結合」についてだね。」
A「これついてだけど、この条件に当てはまるのは必ずしも結婚だけではない、ってことはわかる?」
B「うーん……あ、同棲とか?」
A「そうそう、同棲なんかはまさにそうだし、事実婚もそうだね。」
B「そう考えると、①だけじゃ不十分って感じなのかな?」
A「どうやらそうみたいだね。あと、さっき言ったとおり偽装結婚は要件①をそもそも満たしていないけど結婚ってことになっちゃうし、結婚かそうでないかを分けるのは要件②の有無だということになりそうだ。」
B「要件②……ええと、「その間に生まれた子供が嫡出子として認められる関係」ってやつか。」
A「要件②はさ、偽装結婚の例からも明らかだけど、これさえ満たせば2人の関係は「結婚」になるわけだから、結婚の核を担っているといえるよね。」
B「そうだね。」
A「じゃあこの対偶をとって、いくら要件①を満たしていても、要件②を満たさなければそれは結婚とは別物になるかな? つまり、あらゆる生活を共有していて、傍から見れば明らかに夫婦としての実態があっても、要件②がなければそれは結婚ではなく同棲や事実婚ってことでいいかな?」
B「うん、対偶とかはよくわからないけどそれで合っていると思うよ。」
A「でもさ、この結論ってちょっと寂しいんじゃない?」
B「どうしてさ?」
A「だって要件②は2人の親密さについては何も述べていなくて、2人が子どもをもうけたときにその子どもが社会的にどういう位置づけをされるかを述べているにすぎないじゃないか。つまり、子どもが嫡出子として社会的に認められるようになりさえすればそれが結婚で、2人の仲が良いかどうかは本質的な要素ではないってことになるんだよ。だから、この論理に従えば、結婚するために本当に必要なのは愛なんかじゃなくて、役所に届け出を出すこと、ってことになるんだ。」
B「いやそれは違うよ、だって結婚っていうのはそんな簡単なことじゃなくて、人生の一大イベントなんだ。結婚はもっとロマンチックで非日常的な出来事だと思うよ。」
A「もちろん僕だって結婚の大多数がロマンチックな要素を持っていることを否定はしないさ。でも、結婚の要件①②をもとにして考えると、ロマンチックな要素は結婚にとって二の次だと結論せざるを得ないじゃないか。要件①じゃなくて②が結婚にとってより核心的な要素だからこそ偽装結婚が成り立ち、逆に同棲や事実婚が結婚から区別されるわけだからね。」
B「むむっ……そう言われると確かに…」
A「繰り返しになるけど、これまでの議論が正しいとすれば、結婚とは役所で登録をすること、つまり数ある制度のうちの一つを適用するという事実にすぎないのであって、愛し合うとかは必須ではないんだ。」 

3.結婚は辞書の意味以上のものを持っている?

B「それじゃさっきAくんが言ってた「結婚は単なる制度にすぎない」っていうのは、無意識のうちにこのことに気づいていたってこと?」
A「うん、そうなのかもしれないね。僕はこれまでずっと、周りの人たちの「結婚したい」っていう発言を、小学生がとりあえず「野球選手になりたい」(今だとYouTuber?)って言うくらいのものだと思っていたんだ。つまり、将来の夢という概念が空虚だと気づいている子どもが将来の夢について尋ねられたとき、その場を穏便にやり過ごすためにとりあえず「野球選手」と答えておくのと同じように、将来の生活という概念が空虚だと気づいている人が将来の生活について尋ねられたとき、その場を穏便にやり過ごすためにとりあえず「結婚したい」と答えておく、そんなものだと思ってたんだよね。少なくとも僕は「結婚したい」も「野球選手になりたい」も、そんな感じで使ってきたよ。もちろん今みたいに明確に言語化はしてなかったけどね。」
B「そっかあ。でも、それってみんなの中じゃかなり珍しいほうなんじゃないの?」
A「そうなんだよ。年をとるにつれて、周りの人たちが結婚をなにか制度以上のものとしてとらえていることがわかってきたんだ。みんなの中では、どうやら結婚は『広辞苑 第五版』以上の意味を持っていて、結婚を「なんだかんだでする」ものだと思っているみたいなんだよね。どう? 合ってる?」
B「合ってると思うよ。だからこそ結婚したことある人が80%にものぼるわけだからね。僕も含めて、結婚を「なんだかんだでする」ものだと思っている人はむしろ多数派なんじゃないかな。」
A「それが僕にとって不思議でさ、結婚が単なる制度にすぎないってことはさっき確認したとおりだろう? でもみんなの中で結婚は単なる一制度じゃなくて一種の義務みたいになってるよね。それがちょっとよくわからないところなんだ。」 

4.結婚の理由(生活基盤編)

B「結婚が義務みたいになってるのはさ、1人で生きていくよりも2人で生きていくほうが安心だからじゃないのかな? 一人暮らしをしていると、風邪ひいたときとかよく「結婚してたらなあ」って思ったりするもん。」
A「確かにそれはあるだろうね。「ひとりぼっちになりたくない」っていう心細さみたいなものは、結婚にとって大きな追い風だと思うよ。前は「早く結婚して落ち着きたい」って言葉を聞くたびに「何が落ち着くの?」って思ってたけど、きっと心細さがなくなるんだろうね。」
B「あ、でもそれだけだと同棲や事実婚との差がないってことにならない? 心細さの解消が理由になるのは結婚だけじゃなくて同棲や事実婚もそうだよね。」
A「確かにそうだけど、結婚とそれ以外とでは心細さが埋まる強度が違ってくるよね。好きな人と結婚すれば相手は簡単に別れたり浮気したりできなくなるから、相手に裏切られてひとりぼっちになるんじゃないかっていう不安は確実に薄まる。同棲や事実婚がお互いの同意に基づくのに対して結婚は一種の契約だから、浮気などの「裏切り」に対しては公的にペナルティを与えられるし。そう考えると、結婚は一種の保険みたいなものなのかもね。」
B「まあ、その分別れづらくなったりもするんだろうけどね。」
A「君ってそういうこと考えるんだね、ちょっと意外だったよ。」
B「……あ、そうそう、気持ちだけじゃなくて、生活基盤も同棲や事実婚よりは結婚のほうが安定しそうだね。一人暮らしに比べて家賃や光熱費を節約できるのは同棲や事実婚も同じだけど、結婚しないと配偶者控除・配偶者特別控除・相手を受取人にした生命保険料控除が受けられなくて、財産の相続にかかる税金が2割増えるみたい。要は結婚しないと税金がちょっとかかりやすくなるって感じかな。 
A「調べてくれてありがとう。でも、税の控除は共働きしていればあまり関係のない話だし、財産の相続も何とかなるんじゃないのかって気がするけどね。僕なんかはめんどくさがりだから、たとえ税金がちょっと多くかかっちゃったとしても名字の変更とか結婚にかかる労力のほうがイヤかもなあ。」
B「まあそこはさ、愛の力で乗り越えられるじゃん。」

5.結婚の理由(好き編)

A「その発言で思い出したけどさ、結婚の理由ですぐ思いつくのって、もちろん心細さの解消とか消極的な理由はあるけど、「好きだから結婚するんだ」っていう積極的な理由も考えられるよね。」
B「それはそうだよ、嫌いな人と結婚したいというのは考えづらいし、好きな相手と一緒にいたいという気持ちはごく自然なものだからね。」
A「だよね。…でも、ここにもちょっとわからないところがあるんだ。」
B「またかい……」
A「まあ暇なんだし付き合ってくれよ。でさ、好きだから結婚したいっていう主張の理解できないところは、「好き」と「結婚」が「だから」で結びついているところなんだ。好きなら結婚するのが当たり前、みたいな風潮にはどうしても手放しで賛成できないんだよ。」
B「なんで? 好きな人と結婚したいと思うのは当たり前じゃないか。」
A「僕にはね、「好きだから一緒にいたい」と「好きだから結婚したい」には大きな差があるような気がしているんだよ。好き同士なら一緒にいればいいのに、さらに結婚しなければならないなんて、その理由はいったい何なんだろうね?」
B「うーん…僕には好きだから結婚するってのが自然すぎて、いま何を質問されてるのかいまいちつかめないな……それじゃ逆に質問するけど、Aくんは好きな人と結婚したいって思わないの?」
A「手に入れたい、あるいは手に入れて離したくないとは思うけど、結婚したいとは思わないね。」
B「ふーん、情熱的なのかドライなのかよくわからないね。」
A「それじゃ言い方を変えて聞くけどさ、好きだから結婚する人と好きだけど結婚しない人の差はどこにあると思う? もちろん心細さとか税金とか生活基盤の理由もあるだろうけど、ここではあくまでも気持ちの面でどんな差があるのか意見を聞かせてほしいな。」
B「わかった! 好きだから結婚したいって人はさ、結婚が幸せを与えてくれるって期待してるんじゃないかな。そういう人って結婚にからめて「幸せになりたい」とか言ってるじゃん。」 

6.結婚の理由(幸せ編)

A「お、それは新鮮な意見だな。そうすると、好きだから結婚したいっていう主張は「好きな人と結婚して幸せになりたい」に書き換えることができるってことだね? 確かに、この相手と結婚したら絶対不幸になるってわかってる状況で、それでもその相手が好きだから結婚を選択する、みたいなのは考えづらいね。ロシア文学じゃあるまいし。」
B「でしょ? それに、大多数の人にとって、好きな人と結婚することで高揚感や多幸感が味わえるのは事実だと思うよ。たとえその高揚感や多幸感は永続し得ないとしても、その瞬間だけでも最高潮に幸せになれるんだったら結婚する価値はあるんじゃないかな。」
A「驚いた! 君はニヒリストだったのかい? 君の言うとおり、価値というものの源泉はまさにそこかもしれないよ!」
B「頼むから普通の言葉でしゃべってくれよ……で、僕の発言についてはどう思う?」
A「もちろん良い意見だとは思うけど、これについてはさらに「なぜ結婚と幸せが結びついているのか」と問うことができるね。これまでも述べてきたように、結婚と事実婚・同棲との間には実態として大きな差はないわけだから、ここでは結婚という形が持っている特性を考えなくちゃいけない。」
B「結婚という形? それは制度を適用するとかそういうこと?」
A「それとはまた違っていて、もうちょっと抽象的な意味なんだ。たとえば君が作家だったとしようか。それも、自分が納得できる作品を書くことが最優先の、編集者泣かせの作家だ。ある日、君はほんとうに納得のいく作品を書き上げて、それに至極満足していたとしよう。すると後日、その作品は芥川賞を受賞するんだ。そしたら君はどう思う?」
B「もちろんうれしいに決まってるじゃないか。」
A「それはさ、どうしてうれしいって思うの? 芥川賞を取る前に、君はすでに満足していたはずなのに。」
B「それは芥川賞が良いものだからだよ、そうでなければうれしくも何ともないし。」
A「そうだね、そのとおりだ。そしたら結婚も同じじゃないかな。結婚しなくても2人は幸せだけど、結婚という「良いもの」が付け加わることによってさらにうれしくなる、みたいな。」
B「そっか、中身とは別に外から付け加えられたもの(これを「形」って言うんだね)であっても、それがプラスの価値を持っていればそれはそれでうれしいって点では、芥川賞も結婚も同じだね。でもそれって当たり前のことじゃないの?」
A「当たり前と思える人にはもちろん当り前さ。でも、芥川賞にも結婚にもプラスの価値を感じない人に「どうしてこれはプラスの価値なのか」と聞かれても、そこには根拠がないんだ。芥川賞や結婚がプラスの価値を持っているのは「そういうものなんだ」としか究極的には言えないという意味で、これは気分の問題なのさ。」
B「気分かあ……でも確かにすべての人を納得させる根拠づけはできそうにないね。」
A「そうそう。個人的な意見だけど、お互いがお互いを大切に思っていればたいていの行動は幸せなのであって、結婚しなければ得られないような特別な価値があるわけではないんだよ。それでも結婚という「形」にプラスの価値を見出す人にとっては、結婚が幸せをもたらしてくれることは自明すぎるほど自明のことなんだ。逆に言えば、「形」と価値との間に普遍的な根拠づけがない以上、結婚にプラスの価値を見出せなかった人にとって、結婚が幸せをもたらしてくれることはどうやったって納得できないものなんだ。」
B「…ちょっと疑問なのはさ、結婚にプラスの価値を見出せない人っていうのは、恋愛に価値を見出せない人ってことでいいの?」
A「もちろんその可能性もあるけど、それだけとは言い切れないよ。たとえ付き合っている相手のことを非常に大切にしていても、結婚にプラスの価値を見出せない人というのは十分に考えられるさ。ちょうど文筆業が大好きでも芥川賞にプラスの価値を見出せない人がいることが考えられるのと同様にね。」 

7.結婚の理由(常識編その他)

B「なるほどなあ。それにしてもだいぶ話が進んだね。」
A「そうだね。これまで結婚の理由についていろいろ考えてきたけど、他には思いつくかい?」
B「理由ってほどではないかもしれないけどさ、「するのが当たり前だから」とか「みんなしているから」みたいな固定観念は確かにあるよね。」
A「そうだね、ある程度の年齢になったら結婚するっていうのは今でも常識みたいなものだし、周りのみんなが結婚していったらなんとなく焦りも生まれるよね。」
B「あとは「子どもができちゃったから」とか「親同士の話し合いで決まった」とかくらいじゃないかな。」
A「そうだね、そんなものかも。」
B「Aくんはさ、「結婚するのが当たり前」みたいな常識に従おうとは思わないの?」
A「あれこれ考えずに従っちゃったほうが楽だろうなと思ったことは何度もあるけど、こういう常識に素直に従うことができるのは、おそらく結婚という「形」と幸せとを結びつけられる人なんだよ。僕はあいにくそれを結びつけられない側の人だから、従いたくても従うことがなかなかできないんだ。」
B「なんというか生きるの大変そうだね……」
A「同情してくれてありがとう。で、こういう常識があることは一向に構わないんだけど、それに疑問を呈すると怒る人が多いのは困ったものだと思うね。」
B「怒る人なんているの? どうして?」
A「君みたいな人はむしろ少数派だと思うよ。常識に素直に従える人っていうのは、それに疑問を呈されると、何か自分の価値観を侵害されたように思うらしいんだ。「どうして人を殺してはいけないか」という純粋な問いに対して、「道徳的な人」ほど嫌悪感を抱くというのがその良い例だろうね。結婚についても少なからずいるんだよね、それについて質問しただけで不快になっちゃう人って。」
B「確かにそういう人って一定数いるよね。「どうして」と聞かれると「いいからそうしろ!」みたいに怒り出す人。」
A「そうそう。結婚の話からは逸れちゃうけど、そういう人の困ったところは常識を押し付けてくるところだけじゃなくて、自分の常識を守りたいあまり事実の認識をゆがめてしまうところなんだ。」
B「それはたとえばどういうこと?」
A「ひと昔前に「中国はすぐ衰退する」っていう言説が飛び交ったのを覚えてる? 中国経済がものすごいペースで発展していたときだね。おそらくこの主張をした人は中国が嫌いなんだけど、中国という一つの事実を判断する際、当人が持っている「中国はろくでもない」という常識やそれに基づく中国への嫌悪感が事実判断をゆがめてしまったんだ。当人には中国がすぐ衰退するように見えていたのかもしれないけど、それは「中国には衰退してほしい」という願望が姿を変えたものにすぎなかったんだよ。」
B「なるほど。でも、常識なんて誰もが持っているものなんだから、多かれ少なかれみんながこういう傾向を持っているんじゃないの?」
A「そのとおりさ。だから大事なのは何かを考えるときに、自分がどんな前提に立っているのかにも併せて目を向けることなんだよ。それができるようになれば、物事をより深く考えられるし、自分と異なる意見にも寛容になれると思う。だから僕はいつもそれに気をつけているよ。」
B「そうだね、参考にさせてもらうよ。」 

8.おわりに

B「別に悪気があって言うんじゃないけどさ、こんな話をしているとAくんは生涯独身なんだろうなあという気がするよ。というか結婚する気はそもそもあるの?」
A「あれ、知らなかった? 僕は既婚だよ。」
B「え!? 今知ったんだけど……むしろなんで結婚したの?」
A「そりゃ相手が僕にとって大切な存在で、ずっと一緒にいたいと思ったからさ。それに、僕は結婚する理由はわからないけど、どうしてもしたくないわけじゃないからね。」
B「いや、でもそれじゃ同棲と事実婚との違いが……」
A「細かいことばっか考えてたら結婚なんてできないぞ!」