申如録

日常生活で考えたことなど

ひとりごとの話

今回は、主にひとりごとを癖に持つ(持っていた)人に向けての話だ。そうでない人にとっては、まあそういう人間もいるんだな、くらいの話だと思う。

 

僕は頭の中で誰かと会話をしたり、誰かと誰かの会話を聞いたりする癖がある。誰かに道案内をすることもあれば、野球のウンチクをひたすら聞かされたりもする。他方、僕を差し置いて、誰かと誰かが小難しい議論をしていることもある。

ひとりごとの癖がある人なら、もしかしたらこの「ひとりごと会話バージョン」に共感してくれるかもしれない。そうでない人には、脳内で音楽が流れることがあるでしょう、会話はその延長上の出来事ですよ、と言ってみればなんとなく伝わるかしら。とにかく、日常生活で起こっているような会話が、頭の中で起こるのだ。

 

この癖、正直なところ害のほうが大きいのだが、「百害あって一利あり」という感じでメリットもあることにはあるので、今日はこの癖の持つデメリットとメリットについて話をしてみようと思う。似たような癖をお持ちの人には、特にメリットを参考にしてほしい。そうでない人は、水族館のクラゲでも見るような心持ちで読んでほしい。

まずはデメリットを3つ。

 

【デメリット】

    人の話を聞き逃す

実際の会話の最中に頭の中で会話が始まってしまって、相手の発言を聞き逃すことがある。相手が家族や友人ならまだ良いが、それが上司だとか気軽に聞き返せない相手だとイヤになる。そういう人との会話でこれが起こると「アー」ってなる。たいていは興味のない話をされているときに脳内会話が起こるので、仕事中はしょっちゅうである。

    呼吸が浅くなる

頭の中で誰かにしゃべっているときは、発言に合わせて喉の奥が少し開いたり舌の付け根がかすかに動いたり、実際に声を出して話しているかのように口内が動く。呼吸も同様で、自分が発言していれば息を吐くし、相手が発言している間は息を吸う。ところが、実際に声を出して話しているわけではないので、うまく息を吐きだすことができず、自分が発言している間はほぼ呼吸が止まっている。というわけで、頭の中の会話が終わったあとの深呼吸はなかなか気持ちがいい。

    ひどいときは眠れなくなる

①や②はまだいいほうで、いったんドツボにはまってしまうと、夜寝るときにも会話が続いてしまい、なかなか寝つけなくなってしまう。脳内の会話は意志とほぼ無関係に始まるので、寝つけないなら会話をやめたらいいではないか、という指摘は無意味だ。僕は以前、会話がいつまでたっても終わらず不眠になり、「寝かせてくれ!」と誰かに向かって懇願していたことがある。ただ、こういうドツボにはまるときは、生活リズムがすでに崩れていることが多いので、規則正しい生活は本当に大切。

 

 

 続いて、僕が知るただ一つのメリット。

 

【メリット】

① 語学の上達に役立つ

頭の中での会話を外国語に変換すれば、常にその外国語を復習・活用していることになるので、語学力をかなり向上させることができる。僕はこの方法を使って中国語を勉強していたせいか、始めて2年足らずでHSK6級240点と中国語検定準1級を取りました(*^^)v  とはいえもちろん、頭の中での会話なので、自分が知っている語彙や文法以上のものは出てこない。あくまでも日々の語学学習と、不眠など数多くのデメリットと並行しての会話となる。

僕はこれを学問一般にも適用すべく、頭の中での会話を新しい知見をもたらすものとして確立しようとしたが、それはうまくいかなかった。全く効果がないわけではないが、やはり話の合う他者と対話を重ねるには及ばなかった。他者はすごい。

 

 

(余談)

ちなみに今日はこんな会話があって、それについてこんなことを考えた。

 

「私、アスペルガーなの。だから本音と建前の区別とかがよくわからないのよね。もしかして、私から生まれてくる子どももアスペルガーになっちゃうのかしら(笑う)」

「子どものことをネタにするな、不謹慎だろう」

「だって子どもは私とは別の人格だもの。血はつながっていても、他人だわ」

 

 子どもにアスペルガーが遺伝するかどうかを推測するのは別に不謹慎ではない。が、子どもを他人とする考えはまさにそのとおりだと思った。自分から見れば、親だろうが子どもだろうが、世界に70億人いる他者のうちの一人にすぎない。

 だが、少なくとも僕において、現実はそう簡単ではない。他者は他者でも、見知らぬ人間とは全く異なった在り方をしている人間がいるのだ。たとえば、家族や恋人。彼らは他者のうちの一人にすぎないはずなのに、どんな他者からも隔絶されたこの「僕」を、時に根底から動かす。

これはいったい、何なのだ? というかそもそも、この「僕」はどこから来たのか? ここに他者はどこまで、どのように食い込んでいるのか?